紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「そうよオーリィ。
眠ってたって、耳は聞こえてるかもよ?
いっぱい話しかけてたら、起きてくれるかも」
清良が横入りしてくる。
彼女も真剣な顔をしていた。
「そうだよ。何とかしてそばにいてあげた方が、いいよ」
太一もじっと、オーランドを見つめる。
「もう10年でしょ?いい加減ほとぼり冷めたんじゃないの?」
「だよね、清良。そうだよね。
私もそう思う!」
「そうだよ!騎士団のおっさんに聞いてみたらいいよ!
待ってたって、どうにもならないじゃん!」
お節介な3人は、勝手にオーランドのスマホをいじくりだす。
ランスロットは、出国するときに約束してくれた。
コートニーがもし起きたら、すぐに連絡をくれると。
だからずっと、アドレスは変えていない。
それでも、業務連絡以外は来ることはなかった。
それは、コートニーが今も眠り続けているということ。
結局ランスロットに頼るしかない自分は、あちこちで黒魔法師を取締り、ありとあらゆる手段で悪魔を体から追い出そうとしたのだけど、進歩は見られない。
今更帰りたいと言ったところで、ランスロットがどう反応するか………。
「でも……そうやな、聞いてみるんはタダやんな」
本当は、怖かったのかもしれない。
守れるはずだったのに、守り切れなかった彼女に会うのが。
誰に責められるわけでもないのに。
自分だけはずっと、自分を責め続けているから……。