紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
スマホを受け取り、もてあそんでいると、瑛が口を開いた。
「お前でも、そんな顔をするんだな……」
「は?」
「10年前は、いつもへらへらしていて、得体のしれない不気味なやつだと思っていた」
まあ、Unknownって言われてたくらいですから。
「素直に泣いたりできるように、なったんだな」
「…………」
素直に泣いたり、怒ったり。
そういえば、コートニーに逢うまでの自分はできていなかったかもしれない。
笑っていれば幸運が舞い込む。
そう、信じ込んで、ムリに笑っていた。
「私は笑ってるオーリィが好きよ!」
清良が力いっぱい言う。
「でもどうせなら、心から笑ってほしいよね」
太一が微笑む。
「ねえオーリィ。オーリィが転校してきたとき、なんて呼ばれてたか知ってる?」
はて?とオーランドは首をかしげる。
そんなことはもう忘れてしまった。
まりあは微笑んで、彼に答えを与える。
「王子様、王子様って言われてたんだよ」
「はあ……」
「ねえ、オーリィ。
お姫様の元に行ってあげて。
きっとお姫様は、大好きな王子様を待ち続けてる」
そんなバカな、と言おうとした。
第一僕は王子じゃない。悪魔だった。
王子は別にいて、今はどうしているのか知らない。
そんなことを思っていると、手の中でスマホが震えた。