紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「だってあなた、精霊も悪魔も召還せずに、それに加えて魔方陣も魔法具も使わずに、あんなすごい破壊の力が使えるじゃない。
そんなの、よく考えてみたら悪魔以外ありえないわ。
だから私は、あなたが悪魔の化身なんだと思って──」
そこまで言って、コートニーは口を閉ざした。
目の前に立つオーランドの青い瞳が、冷たく凍っていくのがわかったから。
暖かく、ひだまりのようだった彼の周囲の空気が、冷えていく。
「……そら、素敵な推測やな」
「…………」
「頭が痛い子じゃないっていうのがわかってよかったわ。
そして、キミが『こっち』の世界に通じてるっていう確信も持てた」
少し低くなった声が、散らかった部屋に落ちた。
精霊。悪魔。魔法陣。そんな言葉が、一般人の口から出るわけはない。
何も言い返せなくなったコートニーを見つめ、オーランドは有無を言わせない圧力をかける。
一般人でないなら……たとえ女の子でも、優しくしてやる理由はない。
敵である可能性も、非常に高くなったから。
「まあええわ。急がなあかんから、キミも一緒においで。
帰りにええとこ連れてってやるわ」
オーランドの言う『ええとこ』とはもちろん、騎士団のところ。
しかしその前に、行かなければならないところができてしまった。
「おいでって、どこへ……」
「……僕の兄ちゃんのところや」
不安げに自分を見上げるコートニーに、オーランドはいつものように笑って言った。