紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~





かさりかさりと、枯葉を踏む音が妙に大きく聞こえる。


イギリスの冬は、日本のそれよりもっと寒い。


吐く息は白く、すぐに凍ってしまいそうだ。


それでも太陽は相変わらず空にあって、その部屋を照らしていた。


「久しぶりやな……」


オーランドはその小屋の扉を開いた。


窓際のベッドには相変わらず、お姫様が横たわっている。


ゆっくり近づくと、その姿は当時と寸分変わっていないことに気づく。


つややかな黒髪も、長いまつげも、うっすらと赤みがさした頬も。


涙がこみ上げる。


いかん、これ以上泣いたらかっこ悪すぎる。


オーランドは何とかこらえた。


ベッドの脇にひざまづき、彼女の手をとる。


「コートニー、ただいま」


彼女は答えない。


「ごめんな、ちょっと国外退去命令が出ててん。

でもな、それがやっと取り下げられたんや。

おとなしくおっさんにしたがって仕事をすれば、過去のことはなかったことにしてくれるんやて」


わざと微笑んでみる。


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