紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
*
かさりかさりと、枯葉を踏む音が妙に大きく聞こえる。
イギリスの冬は、日本のそれよりもっと寒い。
吐く息は白く、すぐに凍ってしまいそうだ。
それでも太陽は相変わらず空にあって、その部屋を照らしていた。
「久しぶりやな……」
オーランドはその小屋の扉を開いた。
窓際のベッドには相変わらず、お姫様が横たわっている。
ゆっくり近づくと、その姿は当時と寸分変わっていないことに気づく。
つややかな黒髪も、長いまつげも、うっすらと赤みがさした頬も。
涙がこみ上げる。
いかん、これ以上泣いたらかっこ悪すぎる。
オーランドは何とかこらえた。
ベッドの脇にひざまづき、彼女の手をとる。
「コートニー、ただいま」
彼女は答えない。
「ごめんな、ちょっと国外退去命令が出ててん。
でもな、それがやっと取り下げられたんや。
おとなしくおっさんにしたがって仕事をすれば、過去のことはなかったことにしてくれるんやて」
わざと微笑んでみる。