紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「……?」
コートニーのまつげがぴくりと揺れた気がして、顔を離す。
何も言えずに見守っていると、たしかにそのまつげが、まぶたが、ぴくりぴくりと揺れていた。
「コートニー……」
名前を呼ぶ。
すると彼女は、ゆっくりと、そのまぶたを開けた。
中に現れたのは、マゼンタの瞳。
光彩に裂く、金色の花。
「オー……ランド……?」
バラ色の唇が、自分の名を呼んだ。
信じられなくて、声が出ない。
それでも、体が勝手に彼女を抱き起し、強く抱きしめた。
「コートニー!」
「い……った、痛いわよ!このバカ!」
両手で胸を押されたと思ったら、ぱちんと音がした。
頬があつくなって初めて、殴られたと気づく。
「あんたねえっ、どこに行ってたのよ!」
「え、えと……」
いきなり叱られて、言葉をなくしたオーランドに、コートニーはたたみかける。
「ドラゴンはね、私の時間を代償にとったのよ!」
時間?
話を聞いてみると、こうだった。
コートニーは眠っている間、地獄をさまよっていたのだという。
そこにあのドラゴンがいて、コートニーの時間を代償にとったということを告げた。
その期間は、たった7年。
でも、15歳だったコートニーの、普通に生きていれば一番輝いて楽しい時間だったに違いない、かけがえのない時間だ。