紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
(あかん、怒ってるわ……)
こうなってしまうと、ウソだけでなく、いいわけも通用しない。
仕方なく、正直に話すことにする。
「えー、ですから、さっきも言いましたように、彼女を口説く機会をうかがっていたら、忍者にさらわれて……」
「ジャパニーズサムライか」
「いや、サムライでなくて、忍者ですって。スパイの方です」
ランスロットは小さくため息をつく。
その唇の上のヒゲがふわりと揺れた。
(いやいや、ため息つきたいのはこっちの方やから)
どれだけ尋問されても、夢見姫の能力はもう消えてしまったのだから、今更ああだこうだ言ってもしょうがないではないか。
そう思っても言えないストレスが、オーランドの腹に溜まっていく。
「なぜ最後の戦いの場に、夢見姫の弟を行かせた。
お前が一緒に行くべきだっただろう」
「僕がいなかったら、誰が援軍に指揮出すんですか。
日本の能力者は誰も英語が話せなかったんで、しょうがなかったんです。
まさか力を使い切ってしまうなんて、思わんかったし」
はああ。
二つ目のため息が、ランスロットの口から漏れた。