紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
大声を出しかけたコートニーの唇を、オーランドは優しく人差し指で制す。
顔をのぞきこまれたコートニーは、余計に心臓が暴れるのを感じた。
(なによっ、これ!)
目の前にいるのは、稲穂のような金色の髪に、スカイブルーの瞳を持った青年。
昨日は暗くてよくわからなかったが、日の光の下で見ると、その美しさは認めざるを得ないものであることがわかる。
しかし彼は、確かにイケメンではあるが、正体は不明。
そんな男に翻弄されるのは、全くコートニーの意に沿うところではない。
「見つかったら、兄ちゃんに何言われるかわからへん」
「…………」
「ここで待っててな。
用事が終わったら、ナイ……や、さっき言ってた強いイケメンのところに送ってったるから」
「……どれくらい待つの?」
「さあ、な。
お説教されるやろうから、ちょっと遅くなるかもしれん。
なるべく早く戻ってくるから、隠れていい子にしてるんやで?」
オーランドはそう言うと、にこりと微笑み、不安げに見上げるコートニーの頭をぽんぽんとなでた。
もちろん、その頭にちょこんと載っているミニハットは避けて。
コートニーは、オーランドに昨日の演技がバレたことを確信した。
だって、完全に子供扱いだもの。
そして彼は、さっさと庭の奥に見える建物に向かっていってしまった。
それはレンガ作りの、古い小さな城のような建物だった。
コートニーはオーランドが触った部分の髪をつまみ、くるくるともてあそんだ。
感じたことのない、不思議な感覚がした。