紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


大声を出しかけたコートニーの唇を、オーランドは優しく人差し指で制す。


顔をのぞきこまれたコートニーは、余計に心臓が暴れるのを感じた。


(なによっ、これ!)


目の前にいるのは、稲穂のような金色の髪に、スカイブルーの瞳を持った青年。


昨日は暗くてよくわからなかったが、日の光の下で見ると、その美しさは認めざるを得ないものであることがわかる。


しかし彼は、確かにイケメンではあるが、正体は不明。


そんな男に翻弄されるのは、全くコートニーの意に沿うところではない。


「見つかったら、兄ちゃんに何言われるかわからへん」


「…………」


「ここで待っててな。

用事が終わったら、ナイ……や、さっき言ってた強いイケメンのところに送ってったるから」


「……どれくらい待つの?」


「さあ、な。

お説教されるやろうから、ちょっと遅くなるかもしれん。

なるべく早く戻ってくるから、隠れていい子にしてるんやで?」


オーランドはそう言うと、にこりと微笑み、不安げに見上げるコートニーの頭をぽんぽんとなでた。


もちろん、その頭にちょこんと載っているミニハットは避けて。


コートニーは、オーランドに昨日の演技がバレたことを確信した。


だって、完全に子供扱いだもの。


そして彼は、さっさと庭の奥に見える建物に向かっていってしまった。


それはレンガ作りの、古い小さな城のような建物だった。


コートニーはオーランドが触った部分の髪をつまみ、くるくるともてあそんだ。


感じたことのない、不思議な感覚がした。





< 31 / 276 >

この作品をシェア

pagetop