紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
蔦が絡まったそれをぼんやり見つめていると、オーランドの金色の髪はすぐに見えなくなる。
コートニーは心細かったけど仕方なく、庭の片隅にちょこんと腰を下ろした。
周りは花が咲き乱れているので、動かなければ外から発見されることはないだろう。
ふうと息をつくと、途端に背中のテディベアが話しだした。
「あー、やっと話せる」
周囲に聞こえないように小さな声で言った彼を、コートニーは背中から下ろしてひざに乗せる。
「コートニー、もうやめようよ。
あの男にどこへ連れて行かれるか、わからないじゃないか。
今のうちに、早く逃げようよ」
「うるさいわね。あそこへ帰るよりは、地獄に連れて行かれた方がましよ」
あそこには、二度と帰らないんだから。
「そんなこと言って。
キミの正体がばれたら、本当に地獄行きかもしれないぜ?
あいつ、精霊と友達なんだから」
たしかに。オーランドは気づいているかわからないけど、精霊は自分たちの敵。
だけど、今は他に頼るところがない。
「友達の友達って言ってたわ。
それはすなわち、他人よ」
「屁理屈だ!」
テディベアは大きな声を上げてしまったあとで、自分のふわふわで短い手で口をふさぐ。
幸い、誰にも聞かれなかったようだ。
あたりは相変わらず、静かだった。