紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
一方、コートニーと別れたオーランドは、とぼとぼと薄暗い廊下を歩いていた。
ここはスコットランドのはずれにある、『組織』の拠点。
観光客さえもこない田舎の田舎の、また田舎。
そこにぽつんと建っている、ガイドブックにも載らない、貧乏貴族の小さな古城。
そこがここだった。
故郷でもあるここに帰ってくるのは、オーランドにとって憂鬱以外の何ものでもない。
(やらかしてしもたんは、僕なんやけどな)
夢見姫獲得に失敗したことが、尾をひいているのだ。
本当に夢見姫を奪ってくることはできなかったのか。
本当は、彼女がそれを望んでいないことがわかっていたから。
だから、無意識に彼女を助けるように仕向けてしまったのではないか。
本当は、夢見姫を愛してしまっていたからではないのか。
そう、散々詰問された。
(そうやったら、なんやっちゅうねん)
真っ直ぐで純粋だった夢見姫の力になりたいと思った。
例え、その瞳が自分を写すことはなくても。
例え、彼女がジャパニーズ忍に心を奪われてしまっていても。
そう言ったら、誰が納得してくれる?
いったい誰が得をする?
(恨まれるんは、僕だけでじゅうぶんや)
今朝現れた炎の精霊は、オーランドの兄が怒っていることを知らせてきた。
(しゃーない、今日も元気に怒られてくるか)
オーランドはひとつため息をつくと、背筋を伸ばし、目の前の重い扉にアーマーリングをかざす。
すると扉は、触れてもいないのに、ゆっくりと開きだした。