紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「遅かったな」
扉の内側の会議室の最奥。
そこに座った、オーランドとお揃いの金髪をした青年は、開口一番にそう言った。
「すんません」
「お前、俺が兄だからといって容赦してくれると思っているのなら、今すぐその考えを改めろ。
まったく、お前は常に緊張感が足りない。
だから、大事な任務に失敗したりするんだ」
「へーへー……」
こうこられることはわかっていたが、やっぱり気が滅入る。
オーランドが何かやらかしたとき、その兄……最奥に座っている青年のこと……の口はなかなか止まらない。
誰かが止めない限り、オートリバースの無限ループだ。
(そんなしゃべり方したって、お前かて本当はスコットランドの田舎もんやないか)
心中で毒づきながら、オーランドは黙っていた。
何か言い返せば、オートリバースの説教が、ボリューム全開になるだけなのはわかっている。
騎士団の本拠地とは違い、この部屋は天窓から日がさして明るい。
秋でもほんのり温かく、部屋の中にいた他のメンバーには、居眠りをはじめる者までいた。
その中から、一人の女性が声をあげる。
「アーロンさん。今日の議題はそのことではなかったはずでは?」
凛とした声音で言われ、オーランドの兄、アーロンはしぶしぶながらうなずいた。