紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「そうだったな、お前はさすがだ、アリス。
オーランドと同年とは思えない」
「いえ」
アリスと呼ばれた女性は、冷静な顔をしながら、アーロンにわからないようにオーランドにウィンクを投げた。
(ありがとう、アリス。恩に着ますわ~)
オーランドも小さく手を合わせた。
これは日本に行ってからついてしまった癖だ。
カミサマを拝むときに日本人がしているのを、いつのまにかまねていた。
アリスはいつも、オーランドを無限ループから救ってくれる、ありがたい仲間だ。
肩まで伸ばされた髪は水色に染められており、彼女の黒い瞳を際立たせている。
「オーランド。お前昨夜、ウエストミンスター寺院のステンドグラスを割って、死者を倒したはいいが、なぜ後処理をフェイに丸投げした?」
アーロンはオーランドを思い切り指差し、攻め立てた。
金色の髪に青い瞳はオーランドと一緒だが、そのまぶたはナイフの先のように切れ上がっていた。
オーランドはどちらかというとたれ目。
顔に性格って表れるよな。
自分の方が絶対イケてる。
仲の悪い兄弟は、お互いにそう思っていた。
「あー、そうでした。
報告が遅くなってすんません。
実は昨日、かくかくしかじかでして」
オーランドは順を追って説明した。
コートニーに言ったとおり、ロンドンの町の警備を言い渡されていたオーランドは、ビッグ・ベンの頂上から町を見下ろしていた。
すると、寺院の方で青い光が見えた。
なんだあれはと思っていると、次は死者の軍団が警備員を殴り飛ばし、入り口をこじ開けていて、驚いた。