紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「仕方がないな。
夢見姫の力、是非手に入れたかったのだが、もう済んだこととして諦めよう」
「そうそう、済んだこといつまでも言っててもいいことありませんて」
やっと解放されると思った安堵から余計なことを言ったオーランドを、ランスロットはキッとにらみつけた。
オーランドは黙って背を小さく丸める。
「忘れるな。お前は、騎士団が与えた任務に失敗したのだ。
今後こんなことがあれば、実験体として切り刻んでやるから覚えておけ、
Unkown〈アンノウン〉」
──びくり。
最後の単語を聞いた途端、オーランドは自分の背が過剰に震えたのがわかった。
ランスロットは席を立ち、その軍服のような騎士団の緑の制服の上に纏った白いマントを翻す。
「次の指示は、すでにお前の父や兄に伝えておいた。
今日はもう下がって良い」
冷たく冷えた視界の端で、一瞬だけオーランドをにらみ……ランスロットは、部屋から出ていった。
「……しょーもな……」
なんて子供じみた脅迫だろう。
実験体として切り刻むだなんて。
しかし、ランスロットならやりかねない。
触らぬ神に祟りなし。
ううんと伸びをして、オーランドはイスから立ち上がった。