紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「こんな女の子を脅すのが、『組織』のやり方なんか?
騎士団のやり方なんか?」
「…………」
オーランドが真剣な表情で言ったことに、アーロンは反論の言葉を一瞬失う。
本当は聞かなくてもわかっている。自分だって、その一員なのだから。
子供であろうが、女であろうが、敵とみなした者には容赦はしない。
それが騎士団であり、組織だ。
怒りを抑え、今はコートニーを保護することだけを考える。
怒るな。それは、自分の個人的な感情にすぎない。
「……この子のことは、僕が面倒見るわ。
本当に悪いもんっていうのがわかったら、その場で始末したる。
それでいいやろ?」
「いいわけないだろ!早く、騎士団に……」
「あのー、アーロンさん。
さっきから早く騎士団に騎士団にって言ってますけど、ランスロット様以下、幹部は全員エジプトに視察に出てますが」
クライドがアーロンの背後から、おそるおそる声をかける。
(そういえば、そうやった)
騎士団はヨーロッパだけでなく、世界各地にいる黒魔術師を制圧しようとしている。
もちろん、個人で弱い呪いを行っているような素人は放っておく。
しかし、黒魔術で天候を左右したり地殻変動を起こす、政治運動に関与するなど、多数の人の命に関わるような噂を聞けば、征伐するためにどこへでも飛んでいく。
というわけで、今回ははるばるエジプトへ行っているらしい。
たしか、生きた人間を魔術でミイラに変え、博物館に売っている黒魔術師がいるとかいないとかで……。
騎士団のスケジュールをカレンダーに書き留めるわけにはいかないが、たしかそんな予定が入っていたような気がする。
オーランドとアーロンは顔を見合わせ、すぐに目をそらした。