紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
そんなとき、アーロンが座っていた部屋の最奥のイスの後ろの壁が、突然ぱたんと回転した。
「ふぇッ!?」
驚いて思わず声を上げたのはコートニー。
回転した壁に、人がくっついていたからだ。
「お前ら、うるさいねん。
なんやっちゅうねん、ほんまに」
「父上……!」
アーロン他、オーランドとコートニー以外の、部屋にいた全ての人間がとっさに肩ひざをつき、頭を下げた。
なぜなら、突然現れたその人物は……。
金髪に、青い目を持つ、『組織』のリーダー。
アーロンとオーランドの父だったからである。
歳相応にシワのある顔には、威厳があった。
しかしその手には杖をついており、コートニーの目からも、彼の体が普通の人間より弱ってしまっていることは明白だった。
足元が、ふらふらしている。
「なんとなく聞こえてきとったけどな、お前らもう少し仲良くでけへんのかい。2人っきりの兄弟なんやから」
「…………」
でけへんわ。
そう思っても、口には出さない。
兄もそう思っているようだった。
兄弟が何も言わないのがわかると、父はふうとため息をついた。
「アーロン、お前は過保護すぎや。
オーランドの好きにやらせたり」
「過保護やなんて……」
「過保護やなかったら、弟いびりや。
人気なくなるから、やめえ。
野いちごの読者さんは俺様は好きでも、本物の意地悪は嫌いやで」
「……何をおっしゃっているので?」
「いや、こっちの話や」