紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
父はひとつ咳払いをすると、アーロンに優しく話しかけた。
「お前が俺のためにがんばってくれとるんは、ようわかってるで。
すまんな、こんな頼りない父親で」
「いえ、そんな……」
「ランスロット様が不在。
今の騎士団は下っ端しかおらへん。
なら幹部が帰ってくるまで、オーランドに責任とってもらったらええ。
ほんでこの話は終わりや」
「…………」
アーロンは納得いかない表情だったが、父親には逆らえず、口を閉じた。
父はついていた杖を頼りに体の向きを変え、オーランドを見つめる。
「……お前も、よく考えて行動せえよ」
それだけ言うと、にっと笑った。
「ほんなら、またな~皆の衆」
父は全員に手を振ると、よたよたと壁によりかかり、ぱたんと回転しながら消えていった。
(日本の忍者か、志村け○のバカ殿やで、それ……)
オーランドは呆れながら、息をついた。
どうやら、この場は乗り切れそうだ。
リーダーである父の命令は絶対。
たとえ、父が今はほとんど寝たきりの状態であるとしても。
実質のリーダーは、兄であるとしても、だ。
だけどどうして、自分とコートニーを見逃してくれたのだろう?
明らかにあやしいのに。