紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
コートニーの顔が曇る。
どうやら、騎士団だの魔法師だののことは、彼女も知っていたらしい。
もちろん、死者のことも。
ただ、死者が誘拐を繰り返していることは知らなかったみたいだ。
オーランドは彼女の表情で、なんとなくそれを察する。
「死者たちは、小さな子供をさらっては、その血を抜き取ってそのへんに放置してる」
「そんな……」
「昔から、汚れていない子供の血は、魔術を行う道具や、魔法師の滋養強壮飲料として用いられてきた。
そしてそんなことをするのは、黒魔法師しかありえん」
子供の血を、飲む。
それをリアルに想像してしまったのか、コートニーは持っていた紅茶のカップをテーブルに戻した。
「てなわけで、死者の動きを監視して、被害を最小限に食い止めようというんが、僕らの組織なんや。
わっるい黒魔法師を退治するんは、親会社の騎士団の仕事。
どや、わかりやすいやろ?」
黙ってうなずくコートニー。
その表情には、黒魔法師に対する嫌悪が貼りついているような気がした。
可愛い顔の額に、シワが寄っている。
(……わっからんなぁ……)
オーランドは首を傾げたくなるのを我慢する。