紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


他人の家庭事情に踏み入ってはならない。


そんな常識はあるのか、コートニーは黙った。


(お父ちゃんがああなってしまったのは、僕にも責任があるんやけどな……)


オーランドはそれを思い出さないように、記憶に蓋をした。


「……キミが聞きたいんは、どうしてあの組織で僕だけ白魔法師じゃないんかってことやろ?」


「そう、そうよ。どうして?」


「うーん、生まれつき才能がなかったとしか、言いようがないねん。

どうがんばっても、僕は魔法が使えんかった。

その代わり、キミが見た破壊の力だけは、なんとかな」


「…………」


「お父ちゃんはあの通りやけど、お母ちゃんは普通の人やってん。

僕はお母ちゃん似なんやろうな。

あ、もうとっくに離婚してもうて、お母ちゃんは別の人と再婚したらしいけどな」


「そんなこと、聞いてないし、同情する気もないわよ」


コートニーはきっぱり言った。


オーランドはこらえきれず、ふきだす。


今まで『母がいない』というと、『まあ、お気の毒に』といって優しくあれこれしてくれる女性ばかりだったのに、
(それはオーランドの容姿も作用していたのだろうけど)
コートニーは、全くその点には気を使わない。


(踏み入らない代わりに、気も遣わない、か。面白いやっちゃ)




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