紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「錬金術師、ねえ……」
「ナンシーは、科学や物理と魔法をミックスして、色々なものを作る研究をしてるわ。
変な武器とか、魔法具とか、キメラとか」
「キメラ?」
キメラとは、同一固体内に、異なった遺伝子情報が入っている生物のこと。
普通、犬なら犬の遺伝子だけがその体にあるはずだが、その中に猫の遺伝子を組み合わせれば、それは『犬と猫のキメラ』となる。
もちろんどの生物も、他の生物の遺伝子を拒絶する力を持っているわけで、簡単にそんなものが作れるわけはない。
異種交配をしたとしても、その受精卵が着床する確率は低く、運良く生まれても生存し続けられる確率は、もっと低い。
「死者と召還した悪魔を合成して、キメラを作ろうとしてる。
成功はしてないみたい。
私が出てくるまでの話だけど」
「…………」
オーランドは、前頭部が痛むのを感じた。
(とんでもないやつやんけ、ナンシー……)
騎士団からも、組織からも、そんな人物がいるという情報は聞いていない。
誰も知らないのか、まだ隠しているだけなのか。
「で、その錬金術師に、キミはなんで捕らえられていたんや」
「それは……」
コートニーは困ったような顔をする。
正直に全てを話していいものかどうか、まだ考えている途中、という顔だった。
やがてバラ色のが、かすかに動く。
「……私を、悪魔とのキメラにしようとしているから」