紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
──がちゃん。
オーランドの手から、紅茶のカップがソーサーに落ちた。
運良く割れはしなかったが、こぼれた紅茶がテーブルクロスにシミを作っていく。
「な、な、なんやって!?」
店員が紅茶を処理している間に、オーランドは必死で自分の頭を整理しようとする。
やがて店員が迷惑そうな顔で立ち去ったあと、オーランドはちょこんと座ったままのコートニーに質問した。
「なんで、キミなんや?」
わざわざ監禁までするということは、彼女でなければならない理由があるのか?
「ナンシーが言うには、私の血は普通の人間とは違って特殊だから、悪魔と合成しやすいとかなんとか。
死者と悪魔の合成が成功したら、次は私の番だって。
だから私、そんなのイヤだから、逃げてきたの」
「そら、逃げるわな……」
誰が好んで悪魔と合成されたがるものか。
オーランドがコートニーに感じたのは、少しの同情。
そう。誰が、好んで……。
深い思考に落ちそうになるが、気を取り直してオーランドは話を続ける。
「で、その錬金術師が、今世間を騒がせている死者軍団の元締めってわけか。
ほんなら、その居場所を教えてんか?
騎士団と組織でそいつをなんとかできたら、死者もいなくなるし、キミも逃げなくてよくなるわけやろ?」
これで一発逆転、即時解決。
自信満々で提案したオーランドに、コートニーは首を横に振った。