紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
オーランドは悲しみに暮れた瞳で、こちらを振り返った。
「キミのせいじゃないんやけどな。
今月分まとめて下ろしておいた生活費が、もうないねん。
決して、キミのせいじゃないんやけど」
「…………私のせいなのね」
オーランドは小さくうなずいた。
実はオーランドは中等学校(11歳~16歳まで通う。ここまでがイギリスの義務教育。)を卒業したあと、第六学年クラス(16~18歳)に進級せず、組織から生活費をもらって、仕事をしていた。
つまり、月給制で死者の退治やら、日本のなんとかって能力者を探しにいったりさせられたらしい。
コートニーはこの2日で知ったオーランドのそんな背景を、思い出した。
容姿が良くて、自分に手を出さなくても大丈夫ほどには遊んでいて、ふわふわしている男だと思っていたら、意外に苦労人だった……。
「もっとちょうだいって言ってみたら?」
「あの兄ちゃんがくれるわけないやろ!」
「必要経費じゃない」
そう、オーランドが生活費を使い果たしたのは、確実にコートニーを養っているから。
ずっと一人で暮らす分には余裕の給料をもらって、それを何も考えず浪費してきた彼には、金銭に対する危機感が足りなかったらしい。
「経費であっても、死ぬ直前まで兄ちゃんに頼りたくない。」
オーランドはそういうと、スマートフォンを取り出した。
意地をはるところなの?お金がないって、そんなに恥ずかしいこと?
コートニーは首をひねりながら、兄弟には兄弟なりの仲良くできない理由があるのだと思って、黙って見ていた。