紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「よっしゃ、お出かけや!」
電話をきったオーランドは、コートニーに身支度をうながす。
その顔はいつもの笑顔に戻っていた。
「誰がお金貸してくれるの?」
「……アリス」
その名を口にした途端コートニーが感じたのは、少しの違和感。
「アリス?彼女?」
「ちゃう。組織にいた、水色の髪の」
「ああ、あの美人さんね。私には劣るけど」
「…………」
「なによ!」
思い切り嫌な顔をされ、コートニーは悪態をついてバスルームに向かった。
着替えをするために。
一人になったオーランドは、ため息をつく。
できれば、アリスに借りを作るのは避けたかった。
中等学校の女の子たちも同様。
女の子に借りを作ると、彼女たちはいつまでもそれを忘れない。
代償に求められるのは、オーランドが最も不得意とするものだった。
一度お金を借りた同級生に、彼はこう言われたことがある。
『返さなくていいから、付き合って』
何かを得るには代償がいる。
彼女は、オーランドの自由を差し出せと言った。
少なくともオーランドの耳には、そう聞こえた。