紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
……空と同じように、連れ立って現れたオーランドとコートニーを見て、アリスの顔はたちまち曇った。
「早いなあ、アリス」
「そう?」
この前コートニーを連れて逃げた広場で、彼らは待ち合わせをしていた。
昼間なので、観光客もちらほらと見える。
「コートニー、彼の部屋での暮らしは快適?
おかしなことをされていない?」
アリスは優しげな笑みをたたえ、コートニーに話しかける。
おかしなことって、なによ。
私がそんなふしだらな女に見えるわけ?
「されてない」
コートニーは完結に、そっけなく答えた。
アリスの顔から、笑みが消える。
彼女たちはお互いに、気があわないということを本能で察知していた。
コートニーは、いいひとぶって自分を心配するふりをしながら、本当はオーランドがたぶらかされていやしないかと探っている、めんどくさい女だとアリスを評価した。
(相手にされてないのに彼女面なんて、無様だわ)
アリスはアリスで、年頃のくせに、会ったばかりのオーランドの家に寝泊りできるコートニーの神経を疑う。
……そして、今日も精霊が騒ぐ。
「ちょっと、オーランド」
アリスはコートニーの目の前で、オーランドだけを手招きする。
コートニーは「なんていやらしい女だろう」と思ったが、黙っておいた。
彼女の機嫌を損ねて、金が借りられないと困るのは、コートニーも一緒だから。