紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「あの子の正体、わかったの?」
アリスはオーランドに、ひそひそと耳打ちする。
「報告せんかったっけ。
ごっつい錬金術師のもとから逃げてきた……一般人?」
「どうして一般人に、精霊が騒ぐの?」
「なんか特別な血が通ってるらしいんやけど、詳しくは本人もわからんって言うんやもん」
ほら、だからアリスに頼むのはイヤだったんだ。
オーランドは嫌そうな顔をしないように気をつけながら、アリスの相手をした。
アリスは決して悪い子じゃないけれど、時々マジメすぎて、時々面倒くさい。
「ごめんて。何かわかり次第報告するから、な?」
両手を合わせて首を傾げれば、アリスは「もう」と言いながら、ポケットから紙幣を何枚か取り出した。
ああよかった。この顔に産んでくれたお母ちゃんに感謝。
「恩に着るわ~!
来月の給料入ったら、すぐ返すからな!」
「それより、もっと早くどうにかする方法があるわよ」
「えっ?」
「やっぱり知らないのね」
アリスは呆れ顔で、口を再度開きかける。
そのとき、オーランドのスマホが鳴った。