紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
『おー、オーランド?今どこにいる?』
電話の向こうから聞こえてきたのは、クライドの声だった。
「なんやねん、薄情者」
金かしてくれって言ったら、冷たくあしらったくせに。
オーランドは口を尖らせる。
『そんなこと言ってる場合じゃない。
街に死者が出た。応援を頼む』
「えっ?」
こんな昼間から?
しかも、応援がいるとはどういうことだろう。
クライドは決して弱くない。
むしろ、死者が一番苦手とする火属性の魔法を使える。
そんな彼が、応援を要求するなんて……
「どうしたんや?まさかこんな昼間から、大勢出たんか?」
『あ~……説明がめんどくせえ!
とにかく来てくれ!』
クライドは場所を告げると、一方的に電話を切ってしまった。
「どうしたの?」
アリスが心配そうに、オーランドの顔をのぞきこむ。
「死者が現れたらしい。行こう」
アリスは一瞬驚いた顔をしたけど、すぐにうなずく。
そしてふたりは、クライドに指定された場所に向かって走り出した。
……コートニーのことをすっかり忘れて。
「ちょ、待ちなさいよー!」
公衆の面前で移動魔法が使えないコートニーは、足の速い彼らのあとを、懸命に追っていった。