紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
コートニーの背中で、がくんがくんと揺られるテディベア、シド。
「コートニー!追いかけてどうするんだよ!?」
思わず声を出した彼に、コートニーは答える。
聞かれてまずい人物たちは、すでに前方に小さく背中が見えるのみ。
「昼に動ける死者がいるのよ?
一人でいたら、危ないじゃない!」
「でもさ、あいつら、死者と戦ってるわけだろ?
あんなに急いで向かうってことは、そこに死者がいるんじゃないか?
ヘタすれば、戦闘に巻き込まれるばかりか、捕まっちゃうよ」
「……そ、そっか……」
コートニーは走る速度をゆるめた。
その間にも、オーランドとアリスは彼女を無視して走り続け、ついに姿が見えなくなってしまう。
「なによう……オーランドのバカ」
どうして私を置いていくのよ。
気づかないって、どういうこと?
一緒にいても自分に手を出さないばかりか、色々と面倒を見てくれて、優しくしてくれる。
だから安心して、そばにいられた。
オーランドがそばにいてくれるから、自分はこの街にいられるのに。
完全に忘れて、置いていってしまうなんてひどいじゃない。
コートニーが見上げた空は、相変わらずどんよりと曇っていた。