紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


トラファルガー広場から人気のない通りに移動したオーランドとアリスは、移動魔法を使った。


そしてクライドの指定した場所に着いたのは、電話を受けてから10分後のことだった。


その場所とは……


タワーブリッジ。


ロンドンのテムズ川にかかる跳開橋。
その名の通り、端の両側には高さおよそ40メートルの塔が立っている。


(……コートニーが見たら喜びそうやな)


ゴシック様式の塔や橋は、コートニーのゴスロリ服と調和するだろう。


「……って、コートニー!?」


「あの子なら、途中で追いかけるのをあきらめたみたいだけど」


今更コートニーを置いてきてしまったことに気づいたオーランドに、アリスが冷めた声で言う。


「あ~……そっか……しゃあないな」


悪いことをしてしまった。
不慣れなロンドンに置き去りにされて、きっと不安だろう。


死者の退治が、一番優先するべきこと。


だけど彼女を一人にしたのは、完全に失敗だった。


(早く戻ってやらな、本人にも兄ちゃんにも怒られるな……)


そんなことを思いながら、彼は橋ではなく、塔と塔をつなぐ展望通路を見上げる。


「あそこやな。人払いは済んでるんやろうか?」


「そのはずよ」


塔の中には歴史博物館などがあり、いつもは観光客でにぎわっている。


しかしその入り口は、『立ち入り禁止』となっていた。


オーランドとアリスは顔を見合わせ、その中に入っていった。


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