紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「消したるわ!」
体中から力を集め、巨大な黄金のオーラを右手に集約させる。
そしてその右手を、魔方陣の中へ突っ込んだ。
その瞬間……。
「な……っ!?」
「オーランド!?」
魔方陣の中から黒い霧のようなものが放出され、オーランドの右腕に巻きついた。
その霧は、オーランドを中へ引きずり込もうとする。
「ウソやろ!?」
右腕を抜こうとするが、びくともしない。
それどころか……。
「……っ!?」
右手が、オーランドの意志を無視し、びくりびくりと痙攣しはじめた。
内部から膨れ上がったかと思うと元に戻り、今度は血管が皮膚の下で暴れる。
(……どないしたんやっ!?)
全身から冷や汗が吹き出す。
クライドは死者との応戦に手一杯で、こちらにはこられないようだ。
なんなんだ、これは。
まるで、右腕が、意思を持っているような。
自分の命令に背き、暴走をはじめ……
この魔方陣の中に、入りたがっているようだ──。
必死で抵抗するが、いつの間にか全身を取り巻く黒い霧に、意識を遠くさせられる。
(あかん……)
このままでは、魔方陣に引きずり込まれてしまう。
「オーランド!どうした!?」
クライドの声が、やけに遠くに聞こえる。
暴れ続ける右腕が与える苦痛に、まぶたを閉じかけた瞬間……。
「オーランドっ!」
高い声が、オーランドを呼んだ。
薄くまぶたを開けると、そこにいたのは……。