紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「コートニー……!?」
「なにやってるの!?負けちゃだめっ!」
どうやってここまで来たのか、コートニーはオーランドの元へ駆け寄り、その右腕に自分の腕を巻きつけ、魔方陣から離させようとする。
驚いたのもつかの間、このままだと彼女を巻き込んでしまうと、頭が正常に働きはじめた。
「アホ、危ないやんけ!アッチ行け!」
「危ないのは、あなたでしょう!?」
ぐ、とコートニーが足を踏ん張り、オーランドの腕を引き抜こうとする。
しかし、腕は相変わらず魔法陣にひっぱられたまま。
「しょうが、ないわね……っ」
コートニーが言うと、彼女の背中のテディベアがにぶく光りだした。
「コートニー!危険だよ、やめろっ!」
突然キンキン声で話し出したテディベアに驚き、オーランドは目を丸くする。
(この子、やっぱり……)
コートニーがそのバラ色の唇を開きかけた途端……。
「何をやっているんだ、役立たずども!」
空間を震わせるような低い声が響き、ハッと顔を上げる。
するとオーランドたちの頭上から、緑色の影が白い翼を翻し、こちらに跳んでくるのが見えた。
──ドンッ!ドンッ!ドンッ!
影はオーランドの横に着地するまでに、3発の銀の銃弾を魔方陣に打ち込んだ。
「オーランド、腕を抜け!」
彼は着地すると同時に告げる。
オーランドは我に返り、右腕を思い切り、後ろに引いた。
「きゃんっ!」
つかまっていたコートニーはバランスを崩し、すてんと倒れる。
すると銃弾を打ち込まれて揺らめいていた魔方陣は黒い霧を吸収しながら縮まり、徐々に消えていった。