紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
(……話題、そらしよった……?)
自分の腕が暴れたことについて聞こうと思ったのに、ランスロットはそれには一切触れない。
その代わり、オーランドの横のコートニーに視線を移した。
「……彼女は?」
低い声で問いかけられ、オーランドの背中にぴったりくっついて隠れていたコートニーが、小さく震える。
「ええと……彼女は事情があって、死者に追われています。
騎士団幹部のみなさんが帰ってくるまで、僕が監視役を負っていまして」
「ふむ、アーロンから連絡は来ている。例の少女か」
ランスロットはオーランドを立たせ、コートニーにも手を貸そうとする。
けれどコートニーは自分で立ち上がり、オーランドの背中にくっついたまま。
アリスはそんなコートニーを苦々しい目で見ていた。
「美しい少女だな」
「はあ、そうですね」
「……お嬢さん、申し訳ないが、オーランドを少し貸してはくれまいか。
話が済んだら、すぐに返却する」
騎士団は女子供には優しい。いわゆるフェミニストだ。
(返却って、僕はモノかいな)
呆れるオーランドの後ろで、コートニーは小さくこくりとうなずいた。
「よし、ではアリス。あとの処理は騎士団に任せて、彼女を安全な場所……そうだな、お前の部屋に少し置いてくれないか」
「……はい」
「では、解散。オーランドはこっちへ」
うへー。またお説教や。今日は何時間かかるんやろう……。
オーランドはがっかりと肩を落とす。
その背中から、遠慮がちに声がかかった。