紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
ランスロットの移動魔法で、オーランドは騎士団の会議室にいた。
ここへ呼ばれるということは、ただの説教が始まるわけじゃない。
他者に聞かれてはまずい話をするためだと、オーランドは気づいていた。
案の定、人払いをしてから、ランスロットはようやく口を開く。
「死者の生態については、これから騎士団が調べることとする。
お前たちは、十分注意して、これからも狩りを続けるように」
オーランドは立ったまま、無言でうなずく。
「そして……お前の腕のことだが」
「……はい」
「無闇に、黒魔法に突っ込まない方がいい。
『中のもの』が影響を受けて暴れるのだろう」
ランスロットの深刻な表情が、オーランドを珍しく不安にさせる。
「中のものって……まさか。
だって今まで、何のトラブルもなかったんですよ?」
「しかし、完全にお前が吸収して消化してしまったという証拠もない。
もしかしたら、宿主であるお前を利用し、表へ出てこようと思うかもしれない」
「……!」
オーランドは無意識に、左手で右上腕のタトゥーをさすっていた。
そこだけが、ひどく冷たくなっているような気がした。
ぐるりと上腕を一周する、古代の文字。
それはオーランドの力の証であり、同時に彼に最も恐怖を与えるものでもあった。
『中のもの』……。
その姿を思い浮かべると、さすがのオーランドにも鳥肌が立つ。
ぼこぼこと暴れた肉や血管の感触がよみがえり、吐き気までした。