紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
近づく心
オーランドがアリスのアパートについた時、仲間たちはのんきにアフタヌーンティーを楽しんでいるところだった。
「おー、おつかれオーランド。
ランスロットさん、なんて?」
「……コートニーのことは、僕がしばらく見張ることになったわ。
生活費も振り込んでくれるらしいから」
そう言って、オーランドはスコーンをかじるクライドを無視し、アリスにさっき借りたお金を返す。
「いいのに。それよりさっき、ランスロット様たちが今日帰る予定だって、ちゃんと言っておけば良かったわね」
そういえば、アリスはさっき、何か言いかけてやめた。
あれは『騎士団が帰ってくるから、そこで資金援助してもらえば?』ということだったのだ。
「いやいや……えっと、ところであのワガママ姫さんは?」
オーランドが部屋を見回すと、アリスは嫌そうな顔をした。
「あの子なら、隣の部屋で寝てるわ」
「へ?」
まだ昼間なのに?
「帰りに、倒れたのよ。
熱があるみたい。でも、誰にも体を触れさせようとしないのよ。
暴れてしょうがなかったから、そのまま寝かせたわ」
「……そうなんか……迷惑かけてゴメン」
自分に触れるなと暴れるコートニーは、容易に想像できる。
「あなたのせいじゃないわよ」
アリスはオーランドには気を遣い、そう言った。
その言葉の端々から、彼女がコートニーを嫌っていることは明白だ。
(早く連れて帰った方が、良さそうやな)
「お茶、飲んでいくでしょ?」
アリスがオーランドの顔色をうかがいながらたずねる。
「いや、今日は厄介者を連れて帰るわ」
オーランドは仲間に笑いかけた。
そして、彼らを背にし、コートニーがいるという部屋に向かった。