紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「……よう寝てるやんけ」
コートニーはアリスのベッドを使い、すうすうと寝息を立てていた。
かさばるゴスロリ服もそのまま、靴だけ脱いで。
「熱……か」
オーランドは手のひらで、コートニーの額に触る。
たしかに、少し熱い。風邪か、それとも強い魔力にあてられたからか。
その白い頬に、髪の毛が2筋、汗ではりついていた。
それを避けてやると、長いまつげがぴくりと揺れた。
(ほんまに、寝てるときだけは静かなお姫様やで。
起こすのが可哀想な気もするけど……しゃあないよな)
オーランドはひざまずき、そっとコートニーに囁きかける。
「コートニー。待たせてごめんな。
迎えに来たから、帰ろ」
額をなでてやるけど、コートニーから返事はない。
聞こえるのは、ビスクドールのような、あどけない少女の寝息だけ。
「……アリスがいてよかったな。お前さんは嫌いかもしれんけど」
男だけだったら、もしや変な気を起こさせてしまったかもしれない。
そう思うほど、静かにしているコートニーは、魅力的だった。
……なんて言ったら、確実に怒られる。
『起きてる私もじゅうぶん魅力的よっ!』
腰に手をあて、ぷんすか怒るコートニーを想像したら、笑いがこみ上げた。
そのとき。
「ん……」
横向きに寝ていたコートニーが、寝返りをうった。
(…………?)
オーランドは、コートニーの仰向けになった胸元に、何かが光るのを発見した。