紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「……熱は?」
オーランドはコートニーの額に手をあてる。
そこからは、まだ自分より微かに高い体温が感じられた。
そういえば、いつも真っ白な頬や首が、ほんのりピンク色に染まっている。
潤んだ瞳が煽情的で、目をそらそうと思った瞬間。
「大丈夫」
小さな声で、コートニーは言う。
「……もうええわ。今日は寝とき」
「……襲わないでね?」
襲ってほしいと言っているようにしか、聞こえない。
「まだ僕を変態扱いするんか」
「違う。だって私可愛いから、普通の男の子だって、惑わしちゃうかもしれないわ」
「勝手に言っとけ、どアホが」
オーランドは苦笑し、コートニーの額を人差し指でつついてやる。
コートニーは「あう」と言って、ベッドに倒れた。
……アホな子で、助かった。
そうでなければ本気で、おかしなことを考えてしまうところだった。
「おやすみ」
そう言って、近くにいたシドを投げてやると、コートニーはそれを受け取り、眠りについた。
(普通の男の子、やって。
僕は普通やないで、コートニー)
そして、キミも普通じゃないだろ?
オーランドは、コートニーの首の鎖を見つめる。
(襲うなってのは、それにさわってほしくないってことやな)
……そして、自分の正体を明かしたくないということ。
(敵……とは、思いたくないんやけどな……)
オーランドはコートニーの寝顔から視線を逸らした。
このまま時が止まってしまえばいい。
これ以上近づくことも離れることも、今は考えたくない。
ただこのまま、キミと過ごす穏やかな時が続いてくれれば……。
(……そんなわけにはいかん、よな……)
コートニーの寝息を背後に、オーランドはひとつため息を落とした。