紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


「……熱は?」


オーランドはコートニーの額に手をあてる。


そこからは、まだ自分より微かに高い体温が感じられた。


そういえば、いつも真っ白な頬や首が、ほんのりピンク色に染まっている。


潤んだ瞳が煽情的で、目をそらそうと思った瞬間。


「大丈夫」


小さな声で、コートニーは言う。


「……もうええわ。今日は寝とき」


「……襲わないでね?」


襲ってほしいと言っているようにしか、聞こえない。


「まだ僕を変態扱いするんか」


「違う。だって私可愛いから、普通の男の子だって、惑わしちゃうかもしれないわ」


「勝手に言っとけ、どアホが」


オーランドは苦笑し、コートニーの額を人差し指でつついてやる。


コートニーは「あう」と言って、ベッドに倒れた。


……アホな子で、助かった。


そうでなければ本気で、おかしなことを考えてしまうところだった。


「おやすみ」


そう言って、近くにいたシドを投げてやると、コートニーはそれを受け取り、眠りについた。


(普通の男の子、やって。

僕は普通やないで、コートニー)


そして、キミも普通じゃないだろ?


オーランドは、コートニーの首の鎖を見つめる。


(襲うなってのは、それにさわってほしくないってことやな)


……そして、自分の正体を明かしたくないということ。


(敵……とは、思いたくないんやけどな……)


オーランドはコートニーの寝顔から視線を逸らした。


このまま時が止まってしまえばいい。

これ以上近づくことも離れることも、今は考えたくない。


ただこのまま、キミと過ごす穏やかな時が続いてくれれば……。


(……そんなわけにはいかん、よな……)


コートニーの寝息を背後に、オーランドはひとつため息を落とした。








< 94 / 276 >

この作品をシェア

pagetop