紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「…………っああぁ!」
オーランドはがばりと飛び起きた。
「は……、ぁ……」
「……ちょ、大丈夫?どうしたの?」
いきなり飛び起き、未だ呼吸が整わないオーランドの様子を、起こされたコートニーが寝ぼけ眼で見つめていた。
「あぁ……あかん、怖い夢みたわ~」
オーランドは額に浮かんだ汗を拭いながら、再度寝床に沈み込んだ。
「怖い夢?どんな?」
「起きたら、忘れてもうた」
「なによそれ」
コートニーはあくびをし、自分も二度寝体制に入る。
もちろん、忘れたというのは嘘。
説明は面倒くさいし、コートニーには知られない方がいい情報だから、適当にごまかした。
オーランドは右手を顔の上に掲げ、じっと見つめる。
(……大人しくしとってくれよ……)
念じても、右手は何も答えない。
当たり前だけど。
きっと、『あの日』の夢を見たのは、昨日の戦いで、魔法陣に突っ込んだとき……。
そう、突っ込んだ右手の様子がおかしかったからだろう。
まるで腕だけが違う生き物のようで。
血管や肉が、それぞれ自分とは別の意識を持っているようで。
とにかく、不愉快だった。
(気にせんっちゅう方が、無理よなあ)
オーランドは右手をだらりと下ろした。
今日は、無事に1日過ごせるだろうか。
(暇やったらええな。
したら、コートニーにロンドンの地理を教えたらなあかん)