オムレツの誘惑
 さらに癖になったといえば、オムレツづくりだ。基本的に卵料理が好きな僕は、甘ったるいオムレツを好む。なので、自分で試行錯誤を施し、砂糖にこだわり、フライパン技術を総動員し、ふわりとオムレツを作るために、なんども、なんども、試行錯誤した。合計三十六回失敗し、三十七回目に、僕が望んでいたオムレツが出来上がった。白い艶やかなお皿に盛り、オムレツから湯気が立ち昇り、その上に赤いケチャップをジグザグにかける。お腹が鳴り、姿勢も幾分か正したくなる雰囲気が僕のオムレツにはある。だって、僕が作ったんだから。それぐらいの儀式めいたものが必要だ。僕はスプーンを使い、一口食べる。
 
 美味しかった。
 
 オムレツを食べ、あることを思った。オムレツが似合う情景がある。朝方、女の子との情事の後に、「お腹が空いた」と彼女が言い、窓から射し込む朝日がキッチンを照らし、彼女を照らし、オムレツを二人で食べる。ああ、二〇一三年の夢がもう一つ出来た。
< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

Who?
Who?
kou1Q/著

総文字数/68,085

恋愛(純愛)250ページ

表紙を見る
I.K
I.K
kou1Q/著

総文字数/4,995

恋愛(純愛)3ページ

表紙を見る
チェックメイト
kou1Q/著

総文字数/1,769

恋愛(純愛)1ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop