吸血鬼と歌姫と
six
何事も無かったかのように月日は過ぎて行き、季節は秋になっていた。
あの日のことはお互い訊かない。
ただ私の路上ライブにはいつもルキは来てくれていて、
私は「探してる人は見つかった?」と心の余裕があるときは気に掛けているフリをしていた。
「見つかっていない。」
決まってルキの答えはこうだった。
見つかった暁には、ルキは離れて行っちゃうのかな...
だったら、見つからなくて良い。
そんな自分勝手な私が嫌だった。