それはずっと近くに。
苦くてとても美味しいとは言えないその味は、シュワシュワと喉をくすぐるように入り込んできた。


それと同時に、自分の中の自分がぶれて剥がれるような感覚になった。


「慎二のバカ!!!私のこと全然わかってない!!」


フワフワしながら、今まで言いたかったけど言えずにいた事をぶちまけた。


見ず知らずの隣人に・・・・・・。


その間隣人さんは黙って、時々相槌を打ちながらひたすら聞いてくれていた。



「・・・・・・わらし、慎二のころほんろりすきらろかな・・・・・・」


気がつくと2本目の缶ビールを握っていた。



「愛されたいって思ってばかりじゃ恋愛なんて辛いだけだよ。愛してる。それだけでいいんじゃね?」


いつの間にか夕暮れのオレンジ色に染まる空が、目の前の緑とコントラストをなしていた。


フワフワの頭の中にその言葉がはっきりと染み込んできた。


「隣人しゃん。いいころいいますれ~」


フワフワの勢いを借りて隣人さんの肩に寄りかかった。


「俺は愛してる。それだけでいいな。」


空耳なのか、隣人さんが誰かに伝えるように優しく聞こえてきた。



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