それはずっと近くに。
いつの間に眠ってしまっていたのか、目を覚ますと藍色になりきれていない、淡いブルーの夜空が広がっていた。


寒くないのは私を覆うようにパーカーが掛けられていたから。


寄りかかる肩の方から時折漂いまとわりつくタバコの匂いが落ち着かせた。



「ごめんなさい。寝ちゃってた。あっ!これありがとう。寒くない?」


「お~起きた」


差し出すパーカーを受け取りその人は微笑んだ。


おもむろにその人が羽織るパーカーは、まだ私の体温で暖かく、私がその人を抱きしめ温めているように思えた。


「ありがとう。なんか・・・・・・すっきりした」


「そう。よかった。」


その人はふ~っと煙を吹き出しながら言った。


「そろそろ帰っか。送ってくよ。って言ってもここなんだけどね」


空き缶を袋に放り込みながらその人は立ち上がった。


「彼氏で泣きたくなった時はこれに限る。じゃ!頑張って。おやすみ」


立ち上がったその人への目線は意外に高く、クシャクシャと私の頭を撫でたその
場所が心臓になったようにズキンズキンとなった。


その時思った。



もう私は慎二のことじゃ泣かないって。



「あっ!ここの景色。綺麗ですね。また、また一緒にここで飲みませんか?」


帰りかけたその人は、驚いたように振り返り。そして優しく微笑み言った。




「よろこんで」

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