ワンだふる ワールド 7 ~ワンコの継承~ 《TABOO》
ギャラリーに着くと、大勢の客で盛況となっていた。
「すごいな、お前の友達…」
と真相を知る由もないハチは暢気に辺りを見回している。
そんなハチを尻目に、私は来賓と談笑する主催者を敵視する。
笹川栄太……何を隠そう、彼は二代目ハチ公。
2年前に主従の盃を交わしたにも関わらず、半年経らずで私の元を去った男だ。
その二代目から、自身主催の個展への招待状が届いた。
夢を追って、野良犬となった二代目。
変わらない長髪が色気を醸し出すミニチュア シュナウザー。
その風貌から、あちこちで浮名を流していると風の噂には聞いていた。
まぁ、芸の肥やしとして女を泣かす夜もあるだろう。
――でも、私を招待なんて…
あてつけか、それとも未練か…どちらにせよ、腑に落ちない。
こっちには既に三代目がいる。
大成した自慢ならば、こちらも正面切って先代に襲名披露と洒落込もうじゃないか。
ふとハチを見ると、作品の出来に完全にシッポを巻いている。
――大丈夫…だよね?
対面の機を窺いながら、飾られた作品を見て回ることにした。