ワンだふる·ワールド 8 ~ワンコの激走~ 《TABOO》
だが、予想に反して、30㎞過ぎまで先頭集団で頑張るハチ。
が、次第に苦痛に顔が歪んでいく。
ついには離されて見えなくなってしまった。
――あ~、やっぱダメか…
と、厳しい現実に落胆し始めたその時だった。
突如、猛スパートで追い上げてくるハチ!
暑さにバテたハスキーやマラミュートをごぼう抜きしていく。
鬼気迫るその勇姿に、観客や実況の興奮は冷めやらない。
そして、ラストスパート。
一早く集団から抜け出したダルメシアンとのデッドヒートに競り勝って、まさかの優勝!
――スゴい、ハチ!
感極まって、鬼の目にも涙が光る。
だが、ゴール直後に倒れ込むハチ。
駆け付けたドクターは即座に担架を要求している。
――ハチ!?
直ぐ様駆け付けて見守る私に、力強く言葉を投げるドクターのマスティフ。
「必ず助けるから安心しなさい」
彼の熱い眼差しは、一瞬で私の胸を息苦しくさせた。
――ごめん、ハチ
――私も呼吸器診てもらった方がいいよね?
END