桜廻る
第一幕
一、謎めいた薬売り
ヒュウウウ……
澄んだ青空。
強く風が吹くが、それに逆らうように、一人の少女は歩いていく。
学校の屋上。
灰色のコンクリート。
だんだん、緑色の柵が、近付いてくる。
乱れる髪を整えながら少女は歩き続けた。
その少女の名は、桜川雅(さくらかわ みやび)。
やがて柵の前に立つと、雅は制服のポケットから何かを取り出した。
『バカ』『ブス』『死ね』──。
血が出るくらい、唇をかむ。
それをビリビリに、細かく破くと、手から離した。
ひらひらと紙が落ちていく。
顔を柵の向こうに向けると、たくさんのビル。
下に向ければ、さっきの紙が地面に落ち、風が吹いて宙に舞った。