桜廻る




「探さないとな、その猫を」


「はい。私も、探します」





そう言った途端、雅の胸がズキンと痛む。





(土方さんには、元の時代に戻って、武士を目指してほしい。でも……)





よく、自分の気持ちが分からなかった。


複雑な気持ちのまま、雅は再度箸を動かし始めた。





「ありがとうな、雅」





土方が、微笑む。





「はい。きっと戻れますよ、土方さん。大丈夫です」







チリン……。






その夜、小さな鈴の音が、響いた。


……静かな夜だった。




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