桜廻る
しかし屈伸をしている永瀬の姿が視界に入り、雅はすぐにその考えを改めた。
(まだ私には、リレーがある。せめて今日は、それだけでも……)
「桜川、次リレーだからな」
「あ、うん」
永瀬が雅に近付いて声をかける。
(体が、熱いかも……。頑張らないと……)
思っていた以上の炎天下だ。
三十五度はあるだろう。
遠くには、木陰で土方がこっちを見ている。
土方に向かって少し手を振ると、小さく振り返してくれた。
その時だった。
《それでは、これから昼食に入ります。午後の部は13:00から行いますので──》
そう、放送が入った。
雅は自分のカバンを持ち、土方の所へ駆け足で行く。