桜廻る
「んなもん、全然気にしてねぇよ。桜川はちゃんと走ったし、これが“チームワーク”だろ」
スッキリとした笑顔でそう言う永瀬。
雅も笑顔を返す。
しかし……。
永瀬の表情は、少しずつ曇っていった。
「桜川、お前……。その足で走ったのか?」
永瀬の視線を辿ると……そこにあったのは、さっき杏奈に押され、擦りむいた膝だった。
意識すると、ピリッと痛む。
「うん……。さっき、転んじゃって。でも、大丈夫だから」
「いや、保健室行った方がいいだろ」
《それでは、14:30から閉会式を行います……》
丁度、そんな放送が流れた。
閉会式まで、あと十分くらいある。
「──雅!」
「あ……」
その時、遠くから土方の声が聞こえた。
振り向くと、こっちに来いと手招きをしている。