桜廻る
二人だけになり、雅は恐る恐る口を開く。
「……ごめんなさい、土方さん」
「いや……。誰も信じるわけ、ないよな」
土方のその台詞に、雅は勢いよく首を横に振る。
「私は、信じてます。それに、土方さんに会えなかったら、私は今ここにいませんから……」
その時、ピピピピッと音が鳴った。
風呂が沸いたらしい。
「俺、お前の父上とちゃんと話したいと思う。だから、雅は先に風呂に入っててくれ」
「……一人で大丈夫ですか?私もついて行った方が……」
そう聞くと、土方は箸を置いて首を振る。
「いや、いい。これは俺がやらないといけない事だからな」
土方はそう言うと、この間買った竹を見つめた。
……それを手に持ち、食卓を出て行く。
とうとう一人になった雅は、食器を片付け、風呂場へ向かった。