桜廻る
ザーッと、シャワーを浴びる。
熱いお湯が、今日の疲れを落としていく。
白い湯気の中でシャンプーを探して、ポンプを二回押し、髪を泡立てた。
……今、どんな事を話しているんだろう。
雅の頭の中は、そんな気持ちでいっぱいだ。
さらに、不安にもなる。
土方が追い出されるかもしれない……と。
「あ……」
考えすぎて、手が止まっていた。
再度手を動かして、シャワーで泡を流していく。
そして体を洗い、ゆっくりと湯船に浸かった。
じわじわと、体が温かくなっていく。
この瞬間が雅は好きだ。
(大丈夫だよね……。うん、土方さんなら、きっと大丈夫)
部屋からは何も物音が聞こえてこない。
父も落ち着いて話をしている証拠だ。
雅の父は、明るいが熱くなると止まらない性格だ。
だから、もしも殴ったりしていたら……なんて雅は考えていたが、そんな心配もないようだった。
……膝の痛みも、忘れていた。
ふうっと息をついて、雅はザブンと風呂から上がった。