桜廻る
滴り落ちる水を手拭いで拭き取っている。
「土方さん!これからも、よろしくお願いします!」
「……?」
「お父さんが許してくれたんですよ!」
雅がそう言うと、土方は驚きの表情を見せた。
「い……いいんですか?お父上様」
「ただし!条件がある。ちょっとこっちに来なさい、土方くん」
父は手招きをし、土方の耳に手を当てた。
こそこそと何かを言うと、土方はしっかりと頷く。
「分かりました。その約束、必ずお守り致します」
「あぁ。頼んだぞ。いやぁ、男と男の約束ってやつを、一度やってみたかったんだよ」
父は陽気に笑うと、側に置いていたビールの缶を慣れた手付きでプシュッと開けた。
それをぐいっと一気に飲む。