桜廻る
そこには、赤と黒の金魚が、泳いでいた。
「金魚すくい?」
そそくさとそこに向かっていく土方を、雅は必死で追い掛ける。
土方はそこにしゃがみ込み、金魚を見つめた。
「やりますか?土方さん」
「いいのか?」
「はい!」
雅も笑顔になって、二百円を屋台のおじさんに渡した。
「あんたたち、彼氏と彼女かい」
おじさんは、そうからかうように言いながら、金魚を入れるお椀とポイを手渡す。
やはり、未来と過去では違うのか、土方はポイを不思議そうに見つめると、考え込むように金魚を再度見る。
「ほれ、おまけおまけ。どうせやるなら、二人でやりたいだろ」
「い、いいんですか?ありがとうございます」
おじさんは、雅の分のお椀とポイも渡してくれた。