桜廻る
じゃあ行くかと言いながら、立ち上がった。
「え?土方さん、金魚置いてくんですか⁉」
「あ……?連れて帰っても邪魔になるだけだろ」
その言葉に、雅は不満そうな顔をする。
「だ、だって、せっかく金魚がこんなに!」
大声で雅が言うから、視線が集まってくる。
「ほらほら彼氏さん、愛しい彼女の頼みだよ。聞いてやんな」
(彼女……って、それは違うんだけどっ…)
焦る雅をお構いなしに、おじさんは笑いながら汗を拭っていた。
土方は仕方なさそうにため息をつき……。
「分かった」
そう言って、金魚が入った袋をぐいっと受け取る。