桜廻る
土方に抱きしめられていると気付くのに、時間はかからなかった。
赤かった顔が、さらに赤くなる。
「まさか、こんな早くお前に言う事になるとはな……」
「え……っ?な、何をですか?」
ドキドキと、雅の胸が高まる。
土方にすっぽりと包まれて、温かい。
ドーンッ!
遠くから、花火の音が聞こえてくる。
暗かったのに、少しだけ明るくなって、また暗くなった。
そして……。
「──好きだ、雅」
その声だけが、大きく聞こえた。
花火の音が、聞こえなかった。
一瞬雅の中で時が止まる。
その言葉は、頭の中で何度も繰り返された。
やっと雅の口から言葉が出てきたのは、その意味がようやく分かった時だった。